彼は海に還る。
その初生の故郷であり、生命の故郷へ。
二度と見(まみ)えることはない。
その瞳は澄み、何物をも映すことはない。

絶え間ない波の音と、香る潮が私を包み、彼と世界を共有させる。


彼は土に還る。
その肉体を作り、全てのものを育んだ大地へ。
温もりは消え、二度と熱を伝えない。
その肉体は朽ち果て、想いを紡ぐことを止めた。

柔らかな土と、馨しい花が私を受け止め、彼と世界を共有させる。


彼は空へ還る。
苦悩の日々に叫び、喜びに泣いた空へ。
呼吸を止め、動くことを放棄した。
何も感じず、何も感じさせない。

何かを消し去るように吹く風と、私を包み込む空気が、彼と世界を共有させる。


彼は私に還る。
彼を追い求め、憎み、そして愛した私に。
想いを響かせ、その心を解放する。
全てを信じ、全てを愛した。

彼の魂が私を包み、私はどこまでも歩いていく。



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