追いかける

こんちくしょう。なんだってんだ。
オレは今、サイコームカついてる。
なんでって、目の前でムカつくことが起きてるからだよ。
もう、なんか腹立つし胸はギュってなるし…サイテーだ。

ことの起こりは、奇特な男の出現だった。
背が高くて顔もかっこよくて(多分)仕事も出来る、そんなかんっぺきな男。
でも、なんだかよくわからないけど、オレのことが好きらしい。
オレは男になんか興味ないからって断ったんだ。
でも、お寿司食べませんかとか、近くにおいしいラーメン屋さんが出来たんですよとか言われて、 食わしてくれんならってことで、ちょこちょこ会ってやってた。
何が楽しいのか知んないけど、オレがメシ食ってる間中ニコニコしてオレのこと見てる。
オレみたいになんのとりえもない、むしろ教師たちにも煙たがられるようなヤツの何がいいのかね?
かわいい顔なわけでも勉強が出来るわけでも運動が特別できるわけでも、セックスがうまいわけでもないのに。
何故?
それはずっと思ってた。
オレも特に彼女とかもできそうになかったから(大体声を掛けてくるヤツがいない)、ヒマなときはたいてい男にどっか連れてってもらった。
でも、別にデートとかじゃない。
甘い会話もないし、ただ最近どうだったとか話してメシ食って、家に送ってもらってはいサヨナラってなもんだった。

そんな奇妙な関係がしばらく続いていた今日、オレは見たのだ。
あいつが、女と腕組んで歩いてるの。
しかも、かなりレベルが高い、いい女。
それを見てムカッときた。
いつも「あなたを愛してるんです」とか「あなたが側にいてくれれば他になにもいらない」とか恋人でもねえのにくっさいセリフを言ってきてたくせに。
まぁ、オレはそのたびに「バカじゃねぇの?」とか「ふ〜ん、あっそ」とかって軽く受け流してたけど。
なのに今はちゃっかし女と歩いてるのか。
なんだソレ。おいおい、話が違うんじゃねぇの?
ムカムカする。嘘つきやがったのか。
ずっと睨みつけてたら、あいつがオレに気付いたみたいでハッとした表情になった。
オレはなんでか見つかってしまった!という気分になり、そこからダッシュで走り出した。
なんでオレが逃げるようにしなきゃいけないんだ?

自分ちに着いて、ぜえぜえ言いながらも手を洗う。
これは習慣だからやらずにはいられないんだ。
そして、洗面所の鏡を見ると…

そこには、なんだか傷ついたような顔をした男がいた。
誰だ、こんな表情してるのは。
オレ?なんで?
つーか、胸、イタイ。
なんで?なんかオレ、へこんでる?
ショック…だ。ああいう現場を見たことってよりも、オレがそのことに対して傷ついてるんだってことに。

あ、そっか…。
オレ、あいつのこと好きなのか…。

オレはバカだから、病気になっても熱が出るまで気付かない。

―――そう。バカだから、こんなになるまであいつのこと好きになってたのに気付かなかったんだ。

で、気付いた頃には結構重症で、病院行って薬貰って家でずっと寝てないと治んない。

―――気付いたところで、今回のは治るとかそういう問題でもないけど。

あぁ、オレって勉強できないってだけのバカじゃなかったのか。
根っからのバカ。
今まで必要以上にそっけない態度であいつのこと傷つけてきたことも謝れねえなあ…。
もう、後の祭りかぁ。お、こんなときにことわざ使うなんてちょっと頭よさげ?
なんて、またバカのバカたるゆえんみたいな考えに耽ってたら、急にチャイムが鳴った。

なんだよ、こんなときに。あ、今日新しいエロビ貸してくれるって言ってたから千秋か?
傷心のオレを癒して(イかして?)くれんのか。
と思ってドア開けたら、目の前にあの端正な顔があった。
オレの目はきっといつもの1.5倍くらいあったんじゃないかと思う。
そんだけ驚いた。
だって、今頃あの彼女とラブラブアッハ〜ンな頃じゃ…?
「ちょっと、いいですか…」
「え?あ、あぁ…上がれば…」
こんなとき、一人暮らしで良かったと思う。
だって、こんな男が急に息子に会いに来たらおふくろびびっちまうだろ。

部屋に入って、二人で上着も脱がずに向かい合って、なんだか滑稽だな。
男はオレをじっと見据えている。
走ってきたのか、息が少し上がってるらしい。
「な、なんか用なのか…?」
ホント、何しに来たのかわかんねえ。だって付き合ってるわけじゃナイから別れ話ってんでもないだろう。
「誤解…してるんじゃないかと思って…」
ゴカイ?碁会?何?
「あの、さっきの女性は…ただの知人です」
そう言うと、オレの肩を掴んでオレを覗き込む。
「私が愛しているのはあなただけだと伝えにきたんです」

なんだか、頭がついていかない。オレ、バカだから。回転も悪いみたい。
「…え?」
「さっき、傷ついた顔…したでしょう」
言い当てられて、気恥ずかしくなる。
オレの顔は、持ち主の意思に反して、くしゃりと歪んでしまった。

「あなたも私のこと…好きでしょう?」
そう優しい声で囁かれて、オレは思わず男の胸に顔を埋めて泣いた。
なんでかわかんないけど、泣けたんだ。
さっきのがショックだったからかも知んないし、こいつの言葉が嬉しかったからかも知んない。
どうでも良かった。だって、こいつの腕の中があんまりにも温かかったから。

もう一度問うた男の声に、オレは初めて頷くことで応えた。



<さめコメ>
はい、意味不明短文でし。
なんだか急に書きたくなって、気の向くままに書いてみました。
一回も名前出てきませんね。なんか、こういうの好きなんです。
この二人は「素直になれない」ヒトと、それをわかってて「優しく見守る」ヒトという、
私の中での理想の直高像です。
まぁ、書ききれてないのは毎度のことですが。
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