cause and effect 2
家に帰ってから、オレはなんであのときどきどきしたのだろうか、と考える。
きっと俳優ばりの男にありがとう、なんて微笑まれたからだろうと結論付けて、そのまま眠ってしまった。
そして、千秋が彼女と仲直りした次の次の日にまた喧嘩した、なんてことを聞いたりしてるうちに、慌しく次の月曜日になった。
月曜日の男はあの日以来姿を見せなくて、ヘンな気分の原因を確かめられないせいか、なんだか凹み気味な感じだ。
千秋には、どっか調子おかしいのかなんて柄にもなく心配なんかされるし。
オレとしては、お前こそ彼女と大丈夫なのかって心配だと言ってやったら、いつものことだと苦笑いしてた。
その日もいつも通りに学校からそのまま本屋に行く。
そういえば、この前あの男が買っていったのは月曜発売の週刊誌だった。
それなら、今日来るかな?って何楽しみにしてるみたいなこと思ってるんだよ!
と、自分の心の声にまでつっこんでしまう。
なんだかそわそわしてる自分がバカみたいだから、いつも以上に仕事に熱心に取り組んだ。
忙しく働いてると時間ってあっという間なんだけど、今日は何故だかお客さんが少なくて長く感じる。
だりぃ…そう思い始めた8時頃。
入ってきた客を何気なく見て、オレははっとした。
来た。あいつだ。
今日も一日が終わる帰りの姿とは思えないほどビシッとスーツを着こなしている。
そしてやっぱりあの雑誌のある棚へ向かう。
って何目で追ってるんだ!とまた一人ツッコミをする。
そしてすぐレジに来るかなと思っていたら、なかなか来ない。
別にあいつが気になるんじゃなくて、どうしてすぐレジに来ないか気になるからだからな!と自分に言い聞かせてそいつの向かったほうに行ってみる。
すると、やはりあの雑誌を立ち読みしていた。
この前は閉店間近だったからすぐに会計をしたのかな、と考えていると、その男もオレが来たことに気付いて、こっちをチラッと見る。
まずい。わざわざ来て何もしないのでは怪しまれる。
そう思い、乱れてもいない本の山を直したりした。
気にしてるかなと思い、チラッとうかがい見ると、気にもせずに本を読んでいやがる。
こんな演技したのに全然気にされてなくて、恥ずかしいのとなんだかいたたまれないのとでその男に対して腹が立ってくる。
いや、八つ当たりだってのは分かってるんだけど。
もういいやとレジに戻ろうとしたとき、
「あの、ちょっといいですか」
そう声を掛けられてビックリした。
「え・・・?なんですか?」
やべ。声が上ずった。
「この前までいた人はどうしたんですか?」
このまえ…あぁ、麻衣子さんのことか…。
「浅岡さんですか?彼女なら、学校に禁止されてるのにバイトしてたらしくて、学校に見つかって辞めましたよ」
なんだ。彼女狙いだったわけか。ふ〜ん。
それってちょっとやばくね?だってどう見ても25は過ぎてるのに、相手は高校生だぜ?
「そうなんですか。じゃああなたがこれからずっと月曜日に入るってことなんですね」
「はい」
なんだよ。いちゃわりぃのかよ。そりゃたしかにオレは男だし、麻衣子さんの代わりも女の子が良いに決まってるだろうケドよ。
「ありがとうございます」
そう言ってまたドラマのワンシーンかのような笑顔を見せる。
「ど、どういたしましてっ」
今度はどもっちまった。きっと喉の調子が悪いに違いない。
なぜか赤くなってしまった顔を見られないようにそそくさとレジに戻る。
あんな笑顔見せられたら、ヨ○様〜!って騒いでる近所のおばさんも一瞬にして鞍替えするだろう。
伝票を見ながらそんなことを思っていると、いつの間にか目の前に当の本人がいてビクッとしてしまった。
「お願いします」
そういって差し出してきたのはまたあの雑誌。
「あ、はい!」
慌てて受け取る。
「”あおぎ”さん…と言うんですか…?」
少し不思議そうな声で問われて、自分のネームプレートを見られていることに気付く。
「え・・・?あ、これでおうぎって読むんです。」
「あぁ、そうなんですか。下のお名前は…」
何でそんなこと聞いてくんだ?もしかしてこんな風に遠まわりしてから「浅岡さんの下の名前はなんでしたっけ」なんて聞くつもりか。
そのいぶかしげな様子が伝わったみたいで、慌てて、
「別に他意はありませんよ。あ、あなたにばかり名乗れと言っておいて自分の名前を明かさないのは失礼でしたね。私は直江信綱と言います。」
と早口に一気に喋る。
こんないい男でも慌てることがあるのかと、なんだかその様子がかわいく思えてしまい、思わず笑みが漏れてしまう。
「下の名前は高耶っていいます」
あからさまにほっとした様子で「いいお名前ですね」なんて言うのがまたおかしくてこっちもつられて笑っていた。
直江さんはそのあと会計をすませて「じゃあまた」と店を後にする。
その後のバイトの時間はあっという間に過ぎていた。
<さめコメ>
高耶さんが回ってる…!回るのは直江の専売特許なのに!
そしてなんだかだらだら長くなりそうな…