cause and effect 5


予想外の直江の出現にオレは驚きとともに、嬉しさを感じていた。
直江を見ると胸が熱くなって気持ちが高揚する。
これってまるで……恋?
高耶はようやく、自分の心の状態が世間一般になんと言われるものかを察したのだった。
だが、今日の直江はちょっと憮然とした表情で店内に入ってきて、高耶がいることに気付くと慌てたように笑顔になる。
(なんだ?)
その様子が気になって見ていると、先ほどよりもさらに驚いた。
驚くというよりも衝撃と言ったほうがいいかもしれない。
直江の後ろから、ゴージャスな美女が付いて来たのだった。
ゆるくウェーブのかかった髪、目鼻立ちのはっきりした華やかな顔に、柔らかそうな大きな胸、それなのにちゃんと引き締まった細い腰、なだらかな丸みを帯びたお尻に続く長い足。
これまでテレビでだってにお目にかかったことのないほどの美女だ、と思った。
その女性も高耶の方を見て、にっこりと笑いかけてきたが、引きつった笑みを浮かべることで精一杯だった。
直江が女を連れてきたーーーーーその意味に気付かないほど鈍いわけじゃない。
自分の気持ちが恋だと気付いた次の瞬間に失恋が決定しただなんて、思わず笑い出しそうだった。
いや、でもただの知り合いとか同僚とか…と淡い期待を抱いたところへ、
「ねぇねぇ、直江〜!」
と直江を呼び捨てにする甘い声がした。
見れば、その女性が直江の腕に自分の腕を絡ませて楽しそうに微笑んでいる姿が目に入った。
「やめないか、綾子!」
それを慌てて制止しようとする直江。
こんな公共の場で恋人然とした行動をしたことを恥ずかしく思ってのことだろう。
それがますます高耶の胸を突き刺す。
仲睦まじげな二人を見ていられなくて、高耶は思わず目を逸らす。
だが、そんなことをしても胸を刺す痛みは消えはしない。
ひとしきり店を見回った後、二人は店を出て行った。
高耶は目を逸らして以降、直江の方を見ることが出来なかった。

はぁ。
バイトから帰って、そのままベッドに倒れこむ。
着替えなきゃ制服が皺になってしまう…と思いつつも動く気力がない。
もう何も考えたくないのに頭の中では直江とあの女性ーー綾子さんの姿がぐるぐると回っている。
あんなに似合いのカップルはいないと思った。
今度から始まるドラマの主人公たちだと言われたら納得しそうなほどの美男美女。
嫉妬する気も失せてしまう。
直江……
直江の顔を思い浮かべると、胸がぎゅうっと締め付けられる。
苦しい……
今までにこんな苦しい気持ちになったのは初めてだった。
思えば、恋愛どころかちゃんとした恋だってしたことがなかった。
この子いいなぁ、とかいう淡い想いを抱いたことはあっても、こんなにも切なくなったことはない。
今ごろ二人は仲良く一つのベッドに入ってるのだろうか。
もしオレが男じゃなかったら、もしオレが女だったら。
遊びでいいから抱いてくれと迫ったら、お情けで一度くらいは抱いてくれただろうか?
そんなことを考えてしまった自分に驚いた。
今まで女の子を抱きたいとすら考えたことがなかったのに。
自分は直江とそんなふうになりたいと思っている。
直江の何もかもが欲しいと貪欲なまでに求めているのだ。
そして、それが決して叶わない事だと思い出して、また溜め息をついた。

自覚してしまった想いはますます膨れ上がるばかりだった。



<さめコメ>
これって恋!?と思うと気持ちって突っ走りがちな気がします。
大人な人は片想いの切なさを楽しんだりできるものなんでしょうかねぇ。
高耶さんは気持ちに振りまわされっぱなしです。


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