恋は夕暮れ  3


あの後散々綾子を心の内でののしって、はたと気付く。
何故自分はそこまで苛ついているのだろうか。
例え誤解されたとしても、別にいいのではないか…?綾子は傍から見たら上等な女だし、ハクは付いても損にはならない。
だが、彼にそうだと勘違いされたところを想像すると無性に言い訳がしたくなるのだ。
その理由はわからないが…。


あれから数日経ってもこの妙な胸のモヤモヤは消えてなくならない。
仕事にかまけて考えないようにしていたが、気付くと彼を思い描いてしまう。
もともと物事を深く追求する癖はあったが、こんなにも考え込んでその本質が見えてこないというのは初めてだった。
そんな自分に疑問を覚えながらも、足は今日もあの本屋へと向かう。
店に入ると彼がいて、思わず顔がほころぶ。
しかし彼は何故か戸惑ったような表情を浮かべていて、ぎこちない仕草で会釈をしてくる。
「こんにちは。この間はすいませんでした。お仕事の邪魔になりませんでしたか?」
どこか様子がおかしいと思いつつも彼に近付き、先日の侘びを言う。 「あ、別に…」
そう言いながらも、彼が目に見えて不機嫌になったのがわかった。
やはり先日の件で怒っているんだ!!と半ばパニックになりながらも表面上は冷静を保つ。
「…やはり迷惑をかけてしまいましたか?」
自分だって仕事をしているときは邪魔されたくない。彼だって同じはずだ…!なのに気付かずに俺はなんてことを…!!と 思考がぐるぐる回りだす。
この人にだけは厭われたくないのだ…。
「ち、違います!そんなんじゃ…!…ただすんごい美人な彼女だからビックリしちまって…」
彼は慌てたように言った。
俺はおそらく嫌な顔をしてしまったように思う。いや、本当に自然な反応だったんだ。
「彼女…?綾子のことですか?あいつは…」
そう言いかけたときにタイミング悪く客が来てその続きを伝えることが出来なかった。
客がいなくなるのを待っていようかと思ったが、そんなときに限って込んできたりする。
彼のバイトが終わるまで待っていようかとも思ったが、それも迷惑になるかもしれないと、諦めて店を出ることにした。


店を出ると、そこには二人の学生がいて、こちらをハッと見た。
一人は大きな瞳の、ちょっといいとこのお坊ちゃんといった感じで、もう一人は鋭い目つきでオレンジの少し長めの髪を無造作に結んでいる。
前にいた坊ちゃん風の方がずいっと近寄ってきた。
「あの、あなた…直江さん…ですよね?」
尋ねるような言い方ではあるが、ほぼ確信を持ってといった様子が伺えた。
なのでこちらも誤魔化すことなく答えてやる。
「ええ、そうですが…何か用ですか」
その大きな瞳をきらりと光らせて、
「高耶のことでちょっと話したいんですが。」
そう言われて不覚にもビクリとした。




<さめコメ>
どこか情けない直江第二弾。
すれ違い萌え…(ハッピーエンド前提で、ですケド)

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